定期購読しているBUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2015年06月号から興味をひいた記事のメモです(あと4日で、7月号が発売ですが・・・。)。

まずは、「特集 2015年国会提出法案のインパクト」ですが、自身の業務との関係で優先順位が高くない法改正は審議会レベルからフォローするのは難しいので、こういう解説をしてくれるのはありがたいです。
特に、実務への影響度を◎〇△で表し、注意点や具体的な対応を示してくれているのは、改正内容をより深く把握すべきかどうかを判断する指針になりますし、実務との関係でそれほど優先度が高くなく、概要を知りたいときには非常に便利だと思いました。
ただ、「民法(債権関係)の改正」については、中間試案よりも改正項目が減ったとはいえ、他の法改正に比べると多岐にわたるため、これだけでは情報が少ない気がします。
実務上の優先順位も高いことを考えると、やはりどこかで一度、全体を確認する必要がありそうです*1

それから、本ブログでも特許法(職務発明)改正については、審議会レベルから議論をフォローしてきましたが、その改正案が本国会(第189回国会)に提出され、審議中です*2
また、「特許を受ける権利を原始的法人帰属とすることにより、オープン・クローズ戦略をより確実に展開する。」という観点からは、特許法(職務発明規定)改正だけでなく、不正競争防止法改正と営業秘密管理指針の全部改訂も重要な改正になります*3
特に、特許法(職務発明規定)改正と営業秘密管理指針の全部改訂と連動して理解し生かすことが、オープン・クローズ戦略の実施に必要となると思います*4


さて、先月号に続いて、長島・大野・常松法律事務所の松田弁護士の『ライセンス契約法』は、やはり興味深い記事です。
今月号は、いわゆる特許ライセンス契約の当然対抗制度が導入された背景と経緯、そして制度の概要についての解説です*5

松田弁護士も解説されていますが、
特許ライセンス契約の当然対抗制度が導入された背景と同じ問題は、著作権にも、不正競争防止法にもあると思うのですが*6、この制度、著作権法にも、不正競争防止法にも無いんですよね。
幸いにも、私自身ライセンサーの倒産や著作権の二重譲渡という問題に直面したことはないのですが、特許権のライセンス契約をした後に、著作権のライセンス契約をすると、なんとなく不安になるのは確かです。
例えば、著作物の制作委託契約をするときには、自社が委託者側の場合でも、受託者側の場合でも、当然対抗制度があればと思うことはよくあります。
つまり、自社が委託者側の場合は、著作権の使用許諾では債権的権利のため、ライセンサー(受託者)の倒産や著作権譲渡によって著作物を使用できる権原を失いますし、著作権を譲渡するように求めたところで、著作権譲渡登録まですることはまずないので*7、二重譲渡の危険はあります。
また、自社が受託者側である場合は、著作権を自社に留保したいのですが、対抗力のない著作権の使用許諾だけでは、委託者(ライセンシー)が納得できないということも理解できます。
ただし、二次的著作物部分だけが
委託者に帰属するという修正案を提示すると、これには納得して契約して頂けることが多いのは、今一つ腑に落ちませんが・・・(苦笑)。
従って、特許ライセンス契約の当然対抗制度が導入された時には、「次は、著作権法改正か。これで、少しは安心できる。」と思いましたが、その後、一向に改正される気配もなく・・・。
このまま改正しないのでしょうかね*8


<脚注>
*1 「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」「新旧対照表」は、少なくとも確認する必要がありますが、それだけでは議論の背景や立法趣旨がわからないので、内田貴先生あたりに本を書いて頂けるとありがたいのですが・・・。
*2 「特許法等の一部を改正する法律案要綱」 「特許法等の一部を改正する法律案新旧対照表」 かなり、当初の想定とは違った法改正になりそうです。これは、また、別の機会に。。。
*3 「不正競争防止法の一部を改正する法律案要綱」 「新旧対照表」 「営業秘密管理指針(全部改訂)」
*4 「特許法(職務発明規定)改正」がオープン戦略を生かす法律改正に該当し、「営業秘密管理指針の全部改訂と不正競争防止法改正」がクローズ戦略を生かす法律改正に該当します。
*5 特許権を中心に、特許権と同じ当然対抗制度有する実用新案権と意匠権にも触れており、また、商標権、著作権、不正競争防止法にまで言及しています。
*6 商標権の保護機能の考え方によっては、商標権にも同じ問題が生じうると思います。
*7 「0(ゼロ)」ではありませんが、著作権の譲渡登録をしたのは、本当に片手で数えられるくらいしかありません。
*8 しなさそうですね。。。