2014年5月29日に開かれた(新)産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会の第6回の議事録が2014年7月8日にアップロードされました。
第6回議事録は、こちら


議事録を読んでの感想はというと、一言でいえば「想定外」ですね。
どのように想定外だったのかというと、ここへきて難航しているというか、当初の私の想定と異なり、産業界が提案してきた「全ての特許を受ける権利の原始的法人帰属」とその結果として「対価請求権なし。」という改正の方向性は完全になくなりました。

というのも、大渕委員長が第6回の議論のまとめを以下のようになされています。
最後に、今後の議論のために、本日確認できた点を簡単に整理したいと思います。
まず、特許を受ける権利の帰属については、理論的に一律に決まるというようなものではなくて、どちらの政策判断がよいかというのはもちろんありますけれども、政策判断によって使用者に帰属させることも可能であるという点は確認できたのではないかと理解しております。また、弾力的な運用についても、程度や内容の差はあれども、異論はなかったように思っております。次に、インセンティブの確保についてですが、当事者の自治に完全に委ねることについては、どちらかと言えば慎重な意見が多かったように思っております。そして、当事者の自治に完全に委ねないこととした場合の従業者等のための利益保護策については、本日様々なご見解が表明されました。
本日の議論を整理し、次回の本委員会でさらに議論を深めるため、事務局には、さらに論点を絞り込んだ資料をご準備いただきたいと思います。


ポイントは、以下の3点かと。
○ 「政策判断によって使用者に帰属させることも可能であるという点は確認できた」
○ 「弾力的な運用についても、程度や内容の差はあれども、異論はなかった」
○ 「インセンティブの確保についてですが、当事者の自治に完全に委ねることについては、どちらかと言えば慎重な意見が多かった」

つまり、「一定の要件を満たせば、特許を受ける権利を原始的法人帰属とすることができる。この一定の要件は柔軟に設定しつつも、インセンティブの確保については、法的な規制をする。」ということだと私は理解しました。

これが、先日の「特許を受ける権利、企業にも認める-特許庁の専門委」というエントリーで紹介した、日刊工業新聞の記事の根拠なんですね。
経済産業省・特許庁は29日、特許制度に関する専門委員会を開き、企業内の研究者や技術者による発明(職務発明)について、特許を受ける権利の帰属を発明者本人でなく、発明者が所属する企業にも認めることで一致した。企業が発明者に対する報酬を支払うことを制度的に保証する方向でもまとまった。同庁は7月までに特許法改正の具体案をまとめる。


○ 「発明者が所属する企業にも認めることで一致」

なるほど、「企業にも」の言葉には、随分と含蓄があったのですね。
「原則、特許を受ける権利を原始的法人帰属とする。」ということではないのですね。
気がつきませんでした(苦笑)。

それにしても、大丈夫なんでしょうか、この改正の方向性で?
ここまでの話からすると、確実に今まで以上に複雑な制度になる気がするのですが。。。
実務者としては、複雑な制度を社内に理解してもらい、使いこなせるか心配になってきました。