ハリウッドのロビーストをバックに、TPPにおいて著作権の保護期間を著作者の死後70年とするように交渉する大国アメリカ(詳しくはこちら)。
これを聞いて、皆さん、アメリカって(実は)嫌な国だな〜、とか思っていませんか?(笑)
でも、そもそもの話、アメリカの著作権法は著作権登録制度を前提にしている、って知っていましたか?


実は、アメリカでは、アメリカを本国とする著作物は、著作権登録が訴訟要件となっています。
つまり、著作権登録をしていないと、著作権侵害訴訟を提起できません(アメリカ著作権法411(a))。ただし、いわゆる著作者人格権侵害については著作権登録がなくても著作者人格権侵害訴訟を提起できます(アメリカ著作権法106A)。

そして、①著作物の発行後5年以内に著作権登録を行うと、著作権登録証に記載された事項と著作権の有効性について、裁判上一応の証拠となり、法律上の推定を受けます(アメリカ著作権法410(c))。
②著作権登録後に侵害行為が行われると、法廷損害賠償請求権と弁護士報酬賠償請求権が著作権者に与えられます。

簡易な手続きで著作権登録ができますが、電子出願の場合でも$35(1$=100円として、3,500円)かかりますので、個人や中小企業にはそれなりの負担になります。
そうなると、ある程度の利益が見込めない著作物の著作権登録をすることは難しいでしょうし、著作権登録をしていないと(いわゆる著作者人格権の問題はあるにしても)著作財産権については、実質的にパブリックドメインと同じことになり、自由に利用できるわけです。
さらに、アメリカ著作権法には、フェアユースの規定があります。

結局のところ、日本とアメリカの著作権の保護期間が、著作者の死後70年になったとしても、日本とアメリカとで、ユーザー側が受ける不利益の程度は、著しく異なるというのが、私の理解です。
保護期間の延長論についていうと、アメリカのゴリ押しというよりも、そもそも日本の著作権制度そのものに、アメリカとは異なる問題があるというべきだと思います。

そんなアメリカにおいてすら、現行の著作権法には問題があるとして、アメリカ著作権局のMaria A. Pallante局長が次のような声明を出しています。

Statement of Maria A. Pallante Register of Copyrights United States Copyright Office before the Subcommittee on Courts, Intellectual Property and the Internet Committee on the Judiciary

次回は、Maria A. Pallanteの声明についてお話をしたいと思います。