今回は、BUSINESS LAW JOURNAL(ビジネスロー・ジャーナル)2014年 2月号の「特集 法務のためのブックガイド2014」を読んで、私の購入予定書籍に入ったものをリストアップしてみました。


<民法関連>


民法関連では、椿寿夫先生編著の「強行法・任意法でみる民法」です。
こちらのエントリーの丸野弁護士の「契約書審査 差がつくポイント」に関連して書いたとおり、契約書の作成・レヴューを行う上で、民・商法の任意法規・強行法規の区別は重要なので、今一度きちんと勉強しておきたい、というのが購入の理由です。



続いては、BLJ2014年2月号の富士フィルム(株)の法務部マネジャーの阿部勲氏が紹介されている平井宜雄著「債権各論 Ⅰ (上)」です。
実は、私は、法学部生の頃から、平井教授の書籍が好きで、「債権総論」と「債権各論 Ⅱ 不法行為」は購入済みで、法学部生時代から愛読しています(笑)。
特に、不法行為に関する「保護範囲説」を読んだときの衝撃が今でも忘れられません。

ところで、平井教授は、近時民法(債権関係)改正論議で高名な内田貴氏と、大学における民法の教授方法に関して、平井・内田論争というものを繰り広げています。
私自身、論争が繰り広げられた論文そのものは読めておらず、他の書籍やインターネット等で得られる情報しか持ち合わせていませんが、知りうる範囲で論争を取りまとめると、平井教授が『民法の規定および判例・学説に基礎をおくという伝統的な講義方法は、契約法に関する知識を法律家を養成する目的で体系的に伝達しようとするときには無意味ではないかと不安に感じ、契約法学の目的を「契約当事者間の権利義務関係を事前に設計すること」と規定することが必要』と主張したのに対して、内田氏が『改善すべき点はあるにせよ伝統的講義方法の契約法における講義での重要性は変わりがない。』と批判したというものです。
私自身は、なんだか、企業法務を含む契約実務を行っている方々と内田氏との民法(債権関係)改正論議と相通じるものがある気がします。

というのも、契約法学の目的を「契約当事者間の権利義務関係を事前に設計すること」とした平井教授は、本書で『現在の法律家に求められる契約法学とは、「特定の取引主体間における権利義務関係を事前(取引開始前)に設計することを主要な任務とするもの」と再定義されるべきである。』として、『各種の取引について、その目的を効果的に達成するように、将来生じるであろう様々な局面を想定しつつ典型契約の規定はもとよりあらゆる種類の法技術を駆使して契約書の原案を作成し、他方当事者との間で交渉を重ねて合意を取り付けた上で契約内容を確定するという仕事を日々重視しているのであり、これこそ「権利義務関係の設計」と呼ぶに相応しい仕事だからである。』としているからです。
内田氏とは、実務を知っているか、実務を理解しようとしているか、という姿勢の違いが出ている気がします。
何故、今までこの書籍を購入しなかったのか、悔やまれる一冊です。


<IT関連>


IT関連で最初に購入予定リスト入りしたのは、BLJ2014年2月号の『法務担当者7人による購入書籍分野別批評会』と『03 インターネットサービス法務担当者』の両方で紹介されていた岡村久道編著「インターネットの法律問題」です。
書評を見ると、専門的とか学術的、マニアックという言葉もでてきますが、その分理論的な整合性に配慮した内容になっているようで、視野狭窄に陥りがちな実務担当者にこそ(つまり、私のこと(笑))、必要な一冊ではないかと思います。
購入しよう購入しようと思いつつ、後回しになってしまっていますが、今年は是非購入したいと思っています。



続いては、田島正広監修「インターネット新時代の法律実務Q&A」です。こちらも、BLJ2014年2月号の『法務担当者7人による購入書籍分野別批評会』と『03 インターネットサービス法務担当者』の両方で紹介されています。
こちらは、インターネットサービス企業に所属する組織内弁護士(インハウスローヤー)達が執筆しているということで、インハウスローヤーの視点が法律事務所の弁護士の視点や企業法務知財部員の視点と異なるのか?異なるとして、どのような違いがあるのか?など、興味をひかれます。



IT関連がだいぶ長くなってしまいましたが、最後は、岡村久道著「よくわかる共通番号法入門」です。
こちらは、自社のビジネスとの関係で必要になりそうなので、事前に予習をしておくために購入予定リスト入りしました。
岡村先生の本ということで、個人情報保護法と比較しながら解説がなされている点で、実用性が高そうです。


<英文契約書関連>


中島暁著「詳解 国際法律文書作成 - 英文契約書を中心として」は、当初、購入予定から外れていました。
理由は、三菱重工業(株)というメーカーの法務部(実務家)の書籍ということで、私の所属するIT系とはだいぶ異なる業界であること、実務家の英文契約に関する書籍は、著者が所属する会社のみで通用するルールが、あたかも英国法ないし米国法の法理論(法体系)および判例に基づくものであるかのように(誤解して)紹介されているケースがあることなどが理由でした。
ところが、BLJ2014年2月号の味の素(株)の法務部専任部長の佐藤厚氏の書評に、『国際契約のドラフティングには、その国の法体系や判例などの正しい理解が必要であり、翻訳のような作業と勘違いすると痛い目に遭うということを教えてくれます。』『著者の英米法に関する深い造詣を示すものといえましょう。』とあり、この書評が正しければ、(私の所属する業界とは異なるという点は残りますが)本書に記載されている内容は、英国法ないし米国法の法理論(法体系)および判例に基づくものであることになり、一読する価値があるものになるからです。
というわけで、こちらの書籍も購入予定リスト入りです。


<独禁法関連>


続いては、白石忠志著「独禁法講義 第6版」です。
第2版から改訂の度に購入し続けて、コレクション化していますが(笑)、現職では、あまり独禁法が問題にならなくなったため、第6版の購入を見送りました。
ただ、ライセンス契約を中心に独禁法の問題はちょこちょこ懸念点にあがっていますし、またBLJ2014年2月号の富士フィルム(株)の法務部マネジャーの阿部勲氏の書評に、『世界でほぼ共通する枠組みを解説』とあり、米国やEUの独禁法にも応用可能ということで、改めて購入予定リストに追加です。


<知的財産法関連>


知財法関連では、BLJの誌上のAさんのコメントにもあったとおり、学者の概説書で実務に生かせるのは北海道大学田村善之教授の「著作権法概説」だと私も思っています。
ただ、残念ながら、上記リンクのとおり2001年に第2版が出てから改訂がされていないので、もし今年改訂版が出るなら必ず購入したいと思います。

続いては、「知財、この人にきく」シリーズです。
3〜5年を目処に、自社の知財戦略を再構築したいと思っているので、知財戦略関連の書籍を再読する予定で、Vol.1の丸島先生の書籍は購入済みなので、Vol.2〜4を購入しようと思っています。









ただ、Vol.3-4は、米国特許弁理士と学者の方の書籍なので、優先順位は下がるかもしれませんが・・・。