先月号から「お勧め記事を一つご紹介」から方針を変更しまして、私が興味を持った記事のメモです。


昨年同様、「特集 法務のためのブックガイド2014」は大変興味深く読まさせて頂きました。
こちらについては、別途、関連の記事をエントリーをしたいと思います。

まず最初は、労働政策研究・研修機構の濱口統括研究員の『Opinion 解雇規制の誤解』には、なるほどね、と思いました。
労働法は、法学部時代に勉強しただけで、その後、実務でもほとんど使っていないので、私の労働法に関するレベルは低いと思います。
この点を差し引いても、要約すると以下のような内容であり、ある意味納得。
『日本の「正社員」と呼ばれる労働者の雇用契約が世界的に見て特殊であり、日本型「正社員」は、どんな仕事でも、どんな場所でも働くという約束であるから、社内で「ジョブ(職)」がなくなったからといって、簡単には解雇できない。
つまり、日本の雇用規制が厳しすぎるのではなく、このような特殊な雇用契約が前提となっているから、解雇規制が行われるのであり、従って、まずは、職務限定、勤務地限定の「正社員」という雇用契約が必要』
としています。
これがいわゆる「限定正社員」の話につながり、それがどのような事態を社会に対して引き起こすかは、良く分かりませんが、ただ、個人的には、法務知財以外の仕事をすることになったときは、とりあえず、異動すると思いますが、おそらく法務知財の仕事を求めて転職している気がしていますので、ある意味私は「限定正社員」になるのかなと(笑)。
それとも、転勤は国内国外いずれも可なので、限定正社員にはならないかな?(苦笑)

続いては、田辺総合法律事務所の橋本弁護士の『実務解説 世界的スポーツイベントとアンブッシュ・マーケティング」です。
スポーツビジネスと関係のない方の中には「アンブッシュ・マーケティング」という言葉を始めて聞く方もいらっしゃるかと思いますが、最近では、(BLJも含めて)様々なところで取り上げられているので、今後、認知度はあがっていくと思います。
このアンブッシュ・マーケティングですが、ビジネスと法律(知的財産法。といっても日本の国内の知的財産法ですが。)がとても乖離していると感じる分野の一つです。私がこの言葉を知ったのは2003年頃だったと思いますが、いろんな意味で相当の衝撃を受けたのを覚えています。
この時は、ビジネスサイドとセールス&マーケィング担当部門は便乗(ただ乗り)したい(笑)、ライセンス担当部門と広報部門は、今後の付き合いもあるので、まぁそれなりに業界慣行には従いましょう、法務は(特に海外からの)クレームや訴訟はめんどくさいしお金もかかるので契約しましょう、知財は一体何の権利でどんな法的根拠に基づいて?と、喧々諤々だったのを鮮明に覚えています(笑)。

「アンブッシュ・マーケティング」に関する説明等は、本誌の記事に譲るとして、私の経験上、それこそクレームは良くありますが、日本国内で訴訟にまで発展したケースは皆無でした(海外はあります)。
もちろん、法務知財部門としては、手を引くのか、突っぱねるのかは、知財権侵害や不競法違反が成立する可能性を見極めながら判断しますが、このような法的な観点よりも、今後そのスポーツイベント主催者とどのような関係を構築していきたいのかと、同業他社との差別化に利用できないかなどのビジネス的な観点からの判断が優先されることの方が通常だと思います。
ただ、今回の記事の「おわりに」にあるように、スポーツイベント等の主催者側が「万が一、敗訴してしまった場合、裁判によって公式にある種の「アンブッシュ・マーケティング」が合法と認められてしまい、その結果、受ける主催者側のダメージが図りしれないから」というのは、実感としてそのとおりだと思いますので、国内において本格的な訴訟にはならないと思います。
例えば、競走馬名について物のパブリシティ権が成立するかどうか最高裁まで争われ、物にパブリシティ権はないと判断されてしまったことがあげられます。
それまでは、ビジネス慣行の名の下に良く分からずにライセンス契約を締結し、ロイヤリティを支払っていたという実務に与えた影響は計り知れないと思います。特に新たに契約関係に入る場合などは。
ただし、いろいろと理由があって、未だに物の利用にお金を支払うケースがあるのは事実で、この点については後日機会があればエントリーしたいと思っています。

続いては、毎号興味を持って読んでいる出澤総合法律事務所の丸野弁護士の「契約書審査 差がつくポイント」です。
今回は、基本契約。
ただ、今回は「Point4 所有権留保」のところで、気になることがあったので、また、別の機会に詳細なコメントができればと思っています。

最後は、これも連載記事の実務競争法研究会の「ビジネスを促進する独禁法の道標」の「継続的取引の終了と独占禁止法」です(今回の執筆者は、須藤・高井法律事務所の秋葉弁護士です)。
契約書の作成・レビューをする際に、いつも重視していることが幾つかあるのですが、そのうちの一つが「自社が、(理由はさておき)取引を止めたいと思ったときに、自社にリスクなくすぐに止められるか?」ということがあるので、今回の記事も、非常に参考になりました。
特に、契約書上、自社の都合で取引を終了させることができる場合であっても、優越的地位濫用ガイドラインにあるように、優越的地位濫用が問題になるケースにおいては、「両当事者間の交渉が誠実行われたか否かが考慮されており、正当な事由の判断においても、考慮される可能性が高い」ということには、配慮する必要があると思いました(ついつい、契約書上解除できるようになっていると、何の留保もなく選択肢の一つとして勧めてしまうことがあるので、個人的には要注意事項かなと。)。