いつも堅い話(ばかり?)なので、たまには、読みやすく、読んだ皆さんがクスリと笑えて、リラックスできるような記事を書きたいと思っていたところに、とっても面白いこと(個人的にですが・・・。)があって、これを記事にできないものかと思っていたところに、続いて第2弾も来たので、これは天の思し召し!!
ということで、今日は、お笑い契約文例集なるものを紹介したいと思います。


まず最初に、これは決して、とある契約文言を作成した人を、上から目線で笑うためのものではありません。
また、ある一定の価値観に基づき、契約書の善し悪しを判断するためのものでもありません。
大量の契約業務に忙殺されて、リスク、リスクと猜疑心一杯の目で契約書を見ている(私のことでは・・・(笑))、とある法務部員のこころを和ませてくれるありがたい契約文言の紹介です。

そして、今日は、その第1回です(シリーズ化できるといいのですが・・・。)。

前提として、私の所属する会社では、法務部による契約書のレビューは一定の基準を満たした場合に行われます。
従いまして、その基準に照らして、現場の判断だけで契約書を作成ないし修正して、締結することができる場合があります。
もちろん、たいていの場合は、当社のひな形を取引先に提示し、それで終わる場合がほとんどです。
そして、今回のお話も、本来であれば、現場がひな形を提示して、それで契約書が締結できるはずでした・・・。

ところが、当社のある契約書のひな形を取引先の担当者に提示したところ、次のようなやり取りがあったそうです。

まず、当社のひな形の契約文言は、以下のとおりでした。

(合意管轄)
第20条 本契約および個別契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

これに対する取引先の担当者の修正案は、

(合意管轄)
第20条 本契約および個別契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、大阪地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

これに対して、当社の担当者は、
(合意管轄)
第20条 本契約および個別契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所または大阪地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
と返したところ、

取引先の担当者から、
(合意管轄)
第20条 本契約および個別契約に関して訴訟の必要が生じた場合には、東京地方裁判所または大阪地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
2 前項の専属的合意管轄裁判所は、甲乙協議の上、決定するものとする。

と帰ってきたので、当社の担当者は、これなら特に当社にとって不利はないので問題はないと思いつつも、ちょっと心配になったのか「問題ありませんよね?」という感じで、法務部に相談に来たという流れです。

一体どう考えたらこんな契約文言になるか不思議に思い、当社の担当者に聞いたところ、担当者いわく、
○取引先の会社は大阪に本社があるため、裁判管轄は大阪にして欲しいといわれた。
○先日別件で法務に確認したところ、裁判管轄は、東京でも大阪でも、どちらでも良いですよ、と言われた。
ただ、大阪だけにするわけにはいかないと思い、取引先の意見も取り容れ、法務からOKをもらった形、すなわち、『東京地方裁判所または大阪地方裁判所』にして取引先の担当者に返した。
○取引先の担当者からの再提案が、2項として「前項の専属的合意管轄裁判所は、甲乙協議の上、決定するものとする。』を入れるというものだったので、別に、東京でも大阪でも良いって法務が言っていたのだから、協議して、どっちになってもいいや、と思い、これならOKだな。
と思ったそうです(笑)。

まぁ、確かに、私も、『裁判管轄は、東京でも大阪でも、どちらでもいいですか?」と聞かれたら、『東京でも、大阪でも、弁護士はリテインできるので、どちらでも良いですよ。』と答えていそうで怖いです(苦笑)。