長いタイトルの割には、内容は至ってあたりまえで、今更な感じなのですが、最近ちょっと手痛い目にあったので、教訓というか備忘録として。。。
タイトルのとおり、今回は、「英語ができる」ということと、「英文契約書の作成・レビューができる」ということ、についてのお話です。


結論から先に言ってしまうと、「英語ができる」ということと、「英文契約書の作成・レビューができる」ということは違う、ということです。
そう、すごく当たり前の話です。

だって、これ「英語」の部分を「日本語」に置き換えてみればすぐ分かるはずです。
特に、法務部員であれば(笑)。

置き換えてみると、
「日本語ができる」ということと、「日本文(の)契約の作成・レビューができる」ということは違う。
となります。

日本語ができても、日本の法律に関する法的素養や法的知識とこれらに基づく契約の作成・レビューの能力がないと、本当の意味で法務担当者として契約実務ができることにはなりませんよね。
そうでなければ、法的な専門能力を備えた法務部員なんて不要になってしまいます。

ところが、このことを経営層や他部署の部長クラス以上が理解していないことって良くある気がします。
英語ができて、英文契約書の読み書きができれば、グローバルに海外で(日本国内と同様に)法務部が機能し、ビジネスができると、本気で思っているのではないかと思うことがあります(私の経験が偏っていたらすみません。。。)。
日本でどのように法務の人材を採用して育成しているのか、少し考えれば「英語ができれば、英文契約書の作成・レビューができて、法務部が機能する。」ということが、とてもおかしな考えであることは容易に理解できる気がします。
百歩譲って、これを経営層に理解して頂くのも、法務部の役割だということであれば、この説明をします。
あわせて、グローバル化というのは単に英語ができるようになる、もしくは、英語ができる人を集めれば法務部がグローバル化に対応したことになるわけではなく、グローバル化にあわせて法務機能を充実させる必要があり、それにはきちんと予算を組んで先行投資をする必要があることもご理解頂けるようにご説明いたします(笑)。

以上、今回の(私にとっての)教訓というか、備忘録です(苦笑)。

ところで、法務部員であっても、上記のようなことを知識としては知っていても(頭では理解していても)、実務に生かされていないことって意外とある気がしています。

例えば、英文契約のレビューや作成のときに、ちゃんと最初に、準拠法と裁判管轄を確認してから、英文契約書を読んでいますか?
英語ができて英文契約書が読めるからといって、最初から読んで取引を理解して、リスク等に関して、コメントをつけていって、そして最後の方で、準拠法と裁判管轄の条項がでてきて、「外国法と外国の裁判管轄は自社に不利益だから、(例えば)日本に変えるように交渉すること。」といった交渉担当者へのコメントをつけて、以上、終わり。とか。。。
経験上相手方もなかなか準拠法と裁判管轄をこちらの言い分どおりに修正してくれないので、交渉担当者に「ダメもとで交渉してみて下さい。」とか、
「ここを修正できないと、この契約書は、(例えば)カリフォルニア州法で解釈され、裁判になったときはカリフォルニア州の裁判所で裁判が行われます。そのリスクを受け入れるか検討の上、受け入れるとビジネス判断をした場合には進めて下さい。』以上、終わり。とか(笑)。
なんて、仕事ではいけませんよね。

契約に適用される準拠法と紛争になった際の仲裁地や裁判管轄地を確認せずに、法的なリスクを把握することは無理ですよね。
例えば、先日の「売買(取引)基本契約書/チェックリストシリーズ③」でも書いたように、「契約書上に規定はないが、民法ないし商法に規定があり、裁判時に裁判官が民法ないし商法に基づいた判断をすること」が、当該準拠法の下でもあるのかどうかを考える必要があります。
上記エントリーでは、売買契約を前提に、民商法の規定について確認・判断する必要性について書きましたが、それにとどまらず、当該準拠法の下でどのような法律に注意しなければならないか確認し、判断する必要があるわけです。
そうなると最初に準拠法や仲裁地・裁判管轄地を確認し、それを踏まえてレビューをしないと、レビューの際につけてきたコメントが適切なコメントであるか、契約文言の修正が適切な修正であるか、当該準拠法や仲裁地・裁判管轄地との関係で、もう一度、確認する必要が生じてしまいます。

というわけで、今日のエントリーのもうひとつの結論は、英文契約であっても(理論的には日本文の契約であっても)、まず最初に、準拠法や仲裁地・裁判管轄地を確認しましょう、ということでした。